梨ヶ原草原のカッコウ

富士山の北麓梨ヶ原草原は陸上自衛隊北富士演習場として使用協定のもとで利用されています。


この草原は毎年4月中旬に野焼きが行われ、その野焼によって永く草原が維持され、多くの草原性の生物たちが生息しているそうです。


自衛隊演習場の利用によって保たれている稀な優れた自然環境により現在、数百種もの絶滅危惧種が生息しているとのことです。


この草原からは、裾野の人工物が全く見えない雄大な富士山の景観が堪能できます。



5月21日朝の北富士演習場(撮影:ドコモ スマートフォン Xperia(TM) Z5 Compact SO-02H内臓カメラ)

参考写真以外の以下の写真は、キヤノン望遠ズームレンズEF100-400mmF4.5-5.6L IS USMをCanon EOS 7D Mark II に装着し手持ち撮影しました。



この草原の彼方此方でカッコウの鳴き声を聞くことができます。



「近き木に 来て郭公の 三声ほど」      (高浜虚子




ふと、イギリス・ ロマンティシズムを代表する詩人ウィリアム・ワーズワースの最も愛した鳥カッコウを詠った「カッコウに寄す」 To the Cuckoo を思い出しました。



郭公に (To the Cuckoo.)

幡谷正雄 はたや まさお (1897-1933)訳詩
『ワァヅワス詩集』新潮出版社1935.新潮文庫より


あゝ、樂しい客人(まらうど)よ!曾て汝の聲を聞いたが
いまもまた聞いて喜ぶ。
あゝ、郭公よ!汝を鳥といはうか、
さまよへる聲といはうか?

草の上へに身を横へてゐると、
二段三段(ふたぎだみきだ)汝の聲が聞えた。
丘より丘へわたるやう、
いと遠く、またいと近く。

日光(ひかげ)輝く花咲く谷に、
何げなく汝は啼いてゐるが、
私は思ひ出すよ
夢の日の昔語りを。

いざ來よ、春の寵兒(まなご)よ!
今もなほ汝こそは
鳥とも見えず、眼に見えぬもの、
聲よ、不思議なものよ。

學びの庭に通った幼い日、
聞き慣れたその聲、
私を草叢に、木に、空に
彼方此方と顧みさせた聲。

汝をたづねて幾度か
野原に森にさまようたが、
汝こそは尚も希望よ、愛よ、
慕へども姿は見えぬ。

けれど今もなほ汝の聲を聞く。
野原に臥して汝を聞けば、
そゞろに私の心は
樂しかった昔に返る。

あゝ、幸ある鳥よ!
われらが踏む地(つち)は
再び幻の夢の國とも見える。
それは汝にこそふさはしひ住家!


原詩


To the cuckoo、 ( William Wordsworth )



O blithe new-comer! I have heard,
I hear, thee and rejoice:
O Cuckoo! shall I call thee Bird,
Or but a wandering Voice?

While I am lying on the grass
Thy twofold shout I hear;
From hill to hill it seems to pass,
At once far off and near.

Though babbling only to the vale
Of sunshine and of flowers,
Thou bringest unto me a tale
Of visionary hours.

Thrice welcome, darling of the Spring!
Even yet thou art to me
No bird, but an invisible thing,
Avoice, a mystery;

The same whom in my school-boy days
I listen'd to; that Cry
Which made me look a thousand ways
In bush, and tree, and sky.

To seek thee did I often rove
Through woods and on the green;
And thou wert still a hope, a love;
Still longed for, never seen.

And I can listen to thee yet;
Can lie upon the plain
And listen, till I do beget
That golden time again.

O blessed Bird! the earth we pace
Again appears to be
An unsubstantial, fairy place,
That is fit home for Thee!




ほら!遥か彼方をカッコウが飛んでいきます。

しばらくして、ふと、見ると、近くの枝にカッコウがとまっています。

ここでは鳴かないで飛んでいってしまいました。



参考写真:以前別の場所で撮影したカッコウの写真です。