晴天ならば明るいはずのこの時刻、まるで、残照が色あせて闇につつまれるような曇り空の下、アカガシラサギが、茂みからゆっくりと湖上に姿を現しました。
細かくさざめく波は、キラキラと輝き、鳥の姿ををつつみこみ、雲に遮られた柔らかな光を反射して、幽玄な「鳥の影絵」を作り出しています。秋の「あはれ」を感じさせます。
ふと、「三夕の歌」で有名な西行(さいぎょう)の歌と、昔、学校で合唱した「湖上の月」の歌が私の頭をよぎりました。
「心なき 身にもあはれは 知らりけれ
鴫(しぎ)たつ沢の 秋の夕暮れ」(西行法師)
「湖上の月」 吉岡郷甫作詞 ロッシーニ作曲
一、
月影さやけく風も吹かぬ秋の夜半
眞澄(ますみ)の鏡か塵もおかぬ湖
いざ吾が友小舟出せ
いざ吾が友纜(ともづな)とけや
ニ、
小波(さざなみ)あや織り魚もをどる水のおも
桂のさ枝か棹にかゝる水草
いざ吾が友高く歌へ
いざ吾が友舷(ふなばた)うてや