寒風の中のカワウ

手賀沼に、冬の寒風が吹きまくる12月も、はや中旬になりました。師走の風は、肌身にこたえます。手賀沼の湖面は風に煽られて、大きく波がうねっています。

武蔵野(むさしの)を吹きぬける野分(のわき)を、作家の国木田独歩(くにきだどっぽ)は、名作「武蔵野」に「武蔵野の冬の夜更けて星斗闌干(せいとらんかん)たる時、星をも吹き落としそうな野分がすさまじく林をわたる音を、自分はしばしば日記に書いた。風の音は人の思いを遠くに誘う。自分はこの凄(もの)すごい風の音のたちまち近くたちまち遠きを聞きては、遠い昔からの武蔵野の生活を思いつづけたこともある。」と書いています。

この描写にあるように、沼南側の手賀沼の側道を歩いていると、吹きさらしの手賀沼を渡る風は、帽子を吹き飛ばすほど物凄く、肌を刺すような冷たさを感じることもあります。

沼に突き出た杭の上にとまったカワウは、濡れた羽を乾かすために翼を広げますが、やはり寒さがこたえるのかすぐに翼をとじてしまいます。その後、閉じた翼をまた広げます。何度も何度もこれを繰り返して、濡れた羽を乾かして次の漁(りょう)に備えています。足を踏ん張り、目をしっかり見開いて、遠くを見つめて北風に対峙するその姿は、自然を生きる力強さを感じます。

手賀沼に住むカワウも毎年々、冬の寒さを、こうして凌(しの)いでいるのでしょうか? 鳥たちにとっても、厳しい冬を生きていくのは、大変なようですね。


「凩(こがらし)や 海に夕日を 吹き落す」  (夏目漱石